PROJECT 03
新技術(BIM)

PROJECT 03 新技術(BIM)

〈技術革新が叶える効率化〉

設計の「見えない」を可視化する。

JR東日本が推進する「JRE-BIM※」の取り組みに伴い、3Dモデルによる設計の視覚化など、BIMの積極的な活用が期待されている。JRCでは2025年にBIM支援室を新設し、現場でのBIM活用を推進すると同時に、社内の技術支援を担っている。今回は同室の2人に、BIMの導入事例や今後の展望について語ってもらった。
JRE-BIM:JR東日本におけるBIM/CIMの取り組みの総称。関係者間でBIMデータを共有し、設計・施工から維持管理まで全体の生産性向上を目指す。

設計本部 技術企画部門 BIM支援室

工藤 敦弘 KUDO Atsuhiro

設計本部 技術企画部門 BIM支援室

成田 弓夏 NARITA Yumika

SCENE 1不整合を可視化し、手戻りを最小化

2018年の入社以降、基礎構造物の設計や高架橋のプレキャスト化検討などを経てBIM支援室に配属された成田。当初は3Dモデルの作成に苦戦したという。「3Dモデルでは、2D図面では見えなかった構造の干渉箇所や断面のズレが視覚的に確認できます。不整合が一目で露呈するため、その都度、調整や判断に時間を要しました」。設計業務が高度化する一方、全体としてみれば大きなメリットがある。2009年に入社し、設計照査や設計業務を経てBIM支援室メンバーとなった工藤は、「従来は施工段階で現場対応していた問題を設計段階で解消できれば、現場の手間やコスト、時間を大幅に削減でき、プロジェクト全体の効率が飛躍的に向上します」と語る。

SCENE 2モデル共有で合意形成がスムーズに

2人にとって印象的だったのが、河川改修に伴う鉄道橋りょうの架替えプロジェクトだ。BIMモデルを作成するうえでは2D図面を作成する以上の情報が必要となる。実際には見えない部分や細部まで表現できるからこそ、設計思想をより深く理解することが求められる。「大規模工事のため工種が多岐にわたり、最初は情報の整理に苦労しました。しかし、関係者と議論を重ねる中で、各図面の背景や目的を一つひとつ理解し、全体像を把握できました」と成田。工藤も「徹底的に資料を読み込み、設計者との丁寧なコミュニケーションを心掛けました。共通の3Dモデルを見ながら議論することで設計者同士はもちろん、発注者間の合意形成も迅速に進みました」と確かな手応えを感じた。

SCENE 3情報を取捨選択し、最適な「見せ方」を追求

BIM活用が進む中で、新たな課題も見つかった。BIMは表示機能が多彩であるがゆえに、情報の取捨選択が重要になる。全てを盛り込むと情報過多になり大枠を理解しづらくなってしまう一方で、「実際には重なって見えない部分」などをあえて示すことで理解が深まるケースもある。必要な要素を抽出し、いかに見やすいモデルをつくるか。プロジェクトごとに最適解は異なるため、常に考えながら最も効果的な見せ方を追求する姿勢が求められる。今回のプロジェクトでは、設計者自身が3Dモデルを作成する試みも行い、設計現場での新たな活用実績を積み上げた。こうした取り組みを通じて、より最適な見せ方や活用方法を追求し続ける。

SCENE 4次世代へ繋ぐBIM活用の未来

少子高齢化による技術者不足が深刻化する中、BIMは業界の省力化・高度化の鍵を握っている。「BIM活用を推進することで後進の作業負担を減らし、働き方改革に貢献したい」と成田。今回のプロジェクトでは3Dモデルから断面を切り出し、2D化する取り組みにチャレンジした。3Dモデルの更新が2D図面にそのまま反映されるため、修正の重複作業が省けるなど、さらなる業務効率化を実現した。
「BIM活用はまだ進化の途中です。3Dモデルに不慣れな技術者へのサポートなど、現場の要望に耳を傾けながら、今後も新たな取り組みに挑戦し続けたいです」と工藤は意欲をにじませる。建設プロセスの生産性向上や業務効率化に確かな効果をもたらすBIM。新技術が切り拓くものづくりの可能性に、業界の期待が高まっている。